「あの……ご迷惑をおかけしておきながら言いにくいのですが、なにか服を貸していただけないでしょうか。
タクシーを呼んでいただければ私はこれでお暇(いとま)を……」
「泊めたお礼が欲しいな」
「へ?」
なにをお仰ってるのやら?
お金? お金ですか?
お金払えって言ってます?
「ひゃあ!」
なんでですか?
なぜ、人のTシャツの裾を掴んで捲ろうとしてるんですか?
阻止ですよ! 断固阻止!
「半年、溜まってんの」
「え?」
なにが半年なんでしょう?
「彼氏いたんだから初めてじゃないよな」
「ひゃああああ〜〜なんですか!」
「抵抗しない」
「します! しますってば!!」
Tシャツの裾をまくり上げようとするのを、私も裾を掴んで必死に押さえます。
「ひかりだけなんだ。6ヶ月ぶりに抱きたいと思った女は」
「へ?」
「他の女を見ても誘われても、まったく触手が伸びなかったのに」
「あ!」
Tシャツの裾から手を放したと思ったら、今度は私の両手首を掴んでベッドの上に押さえつけました。
押さえつけられた手首は私が力を入れてもビクともしません。
「あの……んんっ……」
いきなり口を塞がれました。
こ、これはキスじゃないですか?
「や……」
少しだけ開いた口を見逃さずにスルリと自分の温度とは違う舌が入り込んで、私の舌を絡めとるように動きます。
こういったキスをしたことがないわけではありませんが、なんせ数年ぶりなので対応ができません!
「んんっ……フハッ……」
手首を押さえつけられているので、手を使ってりゅうちゃんを押し退けることもできません。
唯一顔を逸らして逃げようとしても、すぐに追いつかれてまた口を塞がれます。
いつの間にか混ざりあったお互いの唾液が私の口の端から零れて、頬を伝って落ちていきます。
そこまでのキスはしたことがなくて、人生初です。
なので自分だけあたふたと焦って頭が真っ白になりかけたと、きりゅうちゃんがちょっとだけ唇を離してくれました。
それでも、私の濡れた唇に息がかかるほど近くにいます。
「はあ……はあ……なん…で……」
なんでこんなことをするんですか。
「あんな奴のことなんて忘れちまえ……」
あまりの濃厚なキスで潤んだ視界に映るりゅうちゃんが、眉間にシワをよせてまるで叱るように私に言いました。
「…………」
「なにも考えず、俺に流されちまえ」
「……え?」
「俺ならちゃんと受けとめてやるから」
「…………」
「終わった野郎のことなんて、俺で忘れちまえよ」
「……でも」
「一目惚れなんだよ」
「え?……“りゅうちゃん”さん?」
今、一目惚れって言いました?
この人?
「なんだ、その“りゅうちゃんさん”って? りゅうちゃんでいいよ」
「……でも……」
「ん?」
「ウソです……よね? 一目惚れなんて……私と“いたす”ために考えた理由ですよね?」
「いたすためって…………そうだよ」
「!」
認める言葉に、ナゼか胸の真ん中がチクンとしました。
「たしかにひかりを抱きたい理由だけど、この場限りの言葉じゃないからな」
「え?」
「ずっとここにいればいい」
「りゅうちゃん……顔が赤いです?」
言ったあと、ナゼかりゅうちゃんの顔と耳がほんのりと赤くなりました。
「ああ、もう! とにかく話はあとでゆっくりとな。もう待てん」
「え? ひゃあ!」
いつの間にかTシャツが腕から抜かれていて、あとは頭を脱ぐだけになってました!
なにも着けていない標準サイズの胸がりゅうちゃんの目の前に晒されていますよ!
「いつの間に……あっ!」
りゅうちゃんの大きくて乾燥した温かな手の平が、腰から胸に向かって撫で上げられます。
胸で止まった手の平が、やわやわと揉み始めました。
指先が胸の先端とその周りをクニクニと弄ります。
「綺麗なピンク色」
「あっ……あんっ!!」
胸の色を褒められても嬉しくもなんとも……なんて思っていたら、パクリ! と胸の先端を
りゅうちゃんの口にかぷりつかれてしまいました。
キュウッっと吸われたり、舌の先で押し潰されたりといろんなことをされてしまいます。
「あぁっ……ひんっ……」
なんて声を出しているんですか?私。
以前付き合っていた人にも同じことをされたのを思い出しました。
でも、昔のことだからでしょうか?
今、りゅうちゃんにされているほうがとても気持ち良くて……そんな自分が恥ずかしいです。
あのころより歳をとったからでしょうか?
それとも……私も欲求不満だったからでしょうか?
だって……りゅうちゃんの6ヶ月なんて目じゃないほど、こういうコトはとても久しぶりだったから。
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