Love You !



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営業の永井さんに資料室で迫られて慌てて逃げ出した後…
怖くてレンジさんの声が聞きたくて…

初めてレンジさんの携帯に電話したら私が掛けて来るのを待ってたって言ってくれた…

私はそれだけでも嬉しかったのに今日も仕事が終わったらまた私を迎えに来てくれるって…

慌てて来なくていいって言われちゃったから今日は時間に余裕を持って
待ち合わせの駅に向かう事にする。

あの後永井さんは戻って来たけど何事も無かった様…
私はとにかくもう永井さんには近付かない事にした。

服部さんとも話す用事があったから少し話したけど…服部さんが本当に永井さんと?
付き合ってる人がいるのに?何だか信じられなかったけど…

それにあの言葉も気になってる…

『小笠原さんは男に縁が無くて寂しい思いしてるからたまには誘ってやってくれって』

あの言葉が本当なら…私…服部さんにそんな風に思われてたんだなぁって…
ちょっと悲しいな…


そんな気分も終業時間が近づくにつれて落ち着かなくなってきた。
今日は帰りがけに何か言われる事も無くて余裕を持って会社を出れたから良かった。


駅前に着いたのはこの前よりも10分程早くて…
だから前レンジさんが立っててくれてた所に今日は私が立った。

何だか緊張してきちゃった…待ち合わせでこんなにドキドキするなんて…

前髪…大丈夫!汗…掻いてない!服装…大丈夫!!
ドキドキドキドキ……はぁ〜〜〜倒れそう〜〜!!

あ…何か飲み物でも買っておこうかな…でもレンジさん何がいいかな…
缶コーヒーよりはあっちのコーヒーの方がいいかも…

駅前のコンビニに1度目を向けてちょっと離れたコーヒーの専門店を目指す。
何歩か歩き出したら腕を掴まれて引っ張られた。
え?レンジさん?引かれた腕の方に視線を向けると…え?!

「な…永井さん!?」

すぐ横にうっすらと笑いを浮かべてる永井さんが立ってた。

「会社の裏で待っててって言っただろ。」
「ちょっと…何ですか?離して下さい!私お断りしましたよね?」

腕をきつく掴まれていくら振りほどいてもビクともしない。

「!!」

後ろから腕を廻されて引きずられる様に連れて行かれたのはお店とお店の間にある細い路地。
薄暗くて歩いてる人は私達の事なんて気にもとめないし…気付かないかも…

「嫌っ…ウウッ!!」

羽交い締めにされて口を手で塞がれた。

「大人しくしろって!折角相手してやるって言ってんだろ。」
「………」

話し方まで変わって…何で?どうしてここまでして私の事なんか?
今まで全然話した事も無かったのに…

「うー!!」

怖くて身体が思う様に動かない…でもとにかく逃げなきゃ…

「うっ!!」

ドン!っとお店の壁に力任せに押さえ付けられた。
口は塞がれたまま前は壁と背中からは永井さんの身体に押し付けられて動けない。

こんな時小さい身体が恨めしく思う。

「大人しくしてろって。まったく素直にオレの誘いに頷いてればこんな面倒な事
しなくて済んだのによ。」
「………」

言いながら携帯を掛けてる気配がする。

「お!謙吾?場所変更。駅前のロータリーのコンビニの前な…ああ…わかった。」
「………」

え?謙吾さん?何で?

「謙吾の奴がやっばやってから別れたいって言い出してさ。だから協力してやろうと思ってね。
オレにも楽しませてくれるって言うし ♪ それにさっきの足蹴られた分奉仕してもらわなきゃな。」
「………」

え?それって…

「この前そんな話で盛り上がってさ。やっぱ頂けるものは頂いておいた方がいいだろ。」
「………」

何?2人して一体どんな話してるの?

「ホント最近色気出て来たんじゃん。何?謙吾にフラれて綺麗になって見返してやるとか
思っちゃったとか?それとも1人エロビデオでも見て研究でもしてるとか?」

「………」

耳元でそんな事を囁かれた…
そんな事してるはずないって言いたいけど…動けないよ…

「最後はオレ達に感謝するさ…」
「!!」

髪の毛を撫でられてゾクリと寒気がした。

「お!」
「!!」

ロータリーに車が停まって永井さんがそれに気付いた。

「暴れたり騒いだりするなよ。痛い目に遇いたくないだろ。」
「ンンッ!!」

必死に足を踏ん張ってもがいたけど体格の差とがっしりと身体を抱え込まれてて…
口はずっと塞がれたままで声も出せない。

他の通行人から見たら仲のいいカップルが肩を組んで歩いてるようにしか見えないかも…
それに元々他人の事なんてみんな気にしてないもの…

だんだん車が近付いてくる…やだ…どうしよう…私このまま連れて行かれちゃうの?

やだやだ…そんなのやだ!!

今日は遅刻しないでちゃんと待ち合わせに来れたのに…
私が先にいてレンジさんの事迎えてあげようって思ってたのに…

「ううっ…!!」
「観念しろって。」

車の運転席からこっちを見て笑ってる謙吾さんの顔が窓越しに見えた…
こんな事する人だったなんて…
永井さんも同じ会社で働いてる人にこんな事出来る人だったなんて…

その前に女の子にこんな事しようとするなんて…この2人最低!!!

「うー!!」

いやあ!!

永井さんが後部座席のドアノブに手を掛けてガチャリとドアが開いた音がして身体がすくむ。

どうしよう…中に押し込まれたら…もう……
やだやだやだ!!レンジさん!!

ド カ ッ !!

「!!」
「!?」

開けた車のドアが数センチ開いた所でまた閉まった。
閉まったドアに誰かの足があって靴が車のドアをギシリと押さえ付けてる。


「智鶴に…何してる……」





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