俺の知らないところで共演した高校生の女優にテレビの生番組でどうやら告白されたらしい。
ただ俺はそのテレビを見たわけでもないし黒柳の話では俺が気にする様な事じゃ無いと言われたが
智鶴とはしばらく会うなと言われた。
だがそんな忠告なんて聞いてらんねぇ…
智鶴が変な誤解してるのはわかってたから絶対今夜会わなきゃと思ってた。
未だに智鶴の携帯の電源は切られたままだ…
「はぁ………」
電源の入ってない携帯をテーブルの上に置いて眺めてる…
昼間はビックリしてしばらく放心状態だった…ランチも何を食べたのかあんまり憶えてない…
服部さんが急に落ち込んだ私を心配してくれて…でもレンジさんの事は何も話して無いから…
だから服部さんに心配掛けない様にその場は何事も無いフリをした…
きっと…レンジさん電話掛けて来てくれてるんだろうな……
仕事も終わったのかしら…
別に…レンジさんを信じてないわけじゃ無い…
数日前にあんな風に私の事抱いてくれたし…ずっと傍にいろって言ってくれた…
でも…今日は…色んな意味でショックだったの……だから…
今レンジさんに会ったら…話したら…きっと嫌な事言っちゃう…
きっと呆れられて…ウンザリして…嫌われちゃう様な事を言っちゃうから…
もう少し自分の中でレンジさんに会っても大丈夫って…思えるまで…ごめんなさい…レンジさん…
ピンポーン ♪ ピンポーン ♪
「 !! 」
誰?まさか……レンジさん?仕事…終わったの?
「智鶴。」
「 !! 」
やっぱりレンジさんだ…
「いるのはわかってる。ここ開けろ。」
「…………」
どどど…どうしよう…このまま居留守を…
「電気点いてんだからいるのは分かってる。俺に居留守なんか使うんじゃねぇ!」
ひゃーーー!!そうよね!!電気点いてればバレバレ??
で…でも…このまま居留守を決め込んで…ごめんなさい…レンジさん…今はまだ会えません!
「5秒で開けなきゃこのドア叩き壊す。」
「!!」
そう言えば前もそんな事を言ってた…でも…まさか…本当にそんな事しないわよ…ね?
「5…」
ひゃっ!本当に数え始めた!?
「4…」
どうしよう…どうしよう!!!
「3…」
え?え?え??そんな!!でも…本当にドア壊されたらどうしよう!!
私はあの時のレンジさんを思い出す…車のドアを容赦なく蹴りつけたわよね!!
そのノリでやっちゃう??壊しちゃう??
「2…」
わっわっわっ!!あ…開けます!!今開けますから!!
心の中でそう叫んで奥の部屋から慌てて飛び出した。
「1…」
「あっ…開けますから!!待って下さい!!!」
ガチャガチャと慌ててチェーンを外す。
慌ててるから上手く出来なくて…やっと外して鍵を開けてドアを開けたら…
「0……ギリギリセーフだな…智鶴…」
「………レンジさん…」
ドアの前に片足を後に振り上げてたレンジさんと対面した。
「本当に壊すつもりだったんですか?」
玄関から奥の部屋に歩きながらレンジさんは私の後ろからついて来る。
「当然だろ。」
サラッと普通の顔で当たり前の様に言う…
やっぱり本気だったんだ!!!
「もう…困りますそんなの!」
「なら居留守なんて使うんじゃねぇ。」
「それは………あっ!」
後から抱きしめられた。
「何で携帯電源切ってる?心配すんだろうが!」
レンジさんの声が耳元で聞こえる…怒ってるわけじゃないみたいだけど…
いつも心地よく私の耳に届いてたレンジさんの声は…
今はいつもよりちょっと声が低く聞こえる……
「………ごめんなさい……」
「知ってるのか?」
「…………」
智鶴が黙ってコクリと頷いた。
「怒ってんのか?」
「…………」
フルフルと首を振る。
「疑ってんのか?」
「…………」
またフルフルと首を振った。
「じゃあ何で俺を避ける?」
「…………」
「智鶴……」
「…あ…」
後からもっと抱きしめられて…レンジさんの身体全部で抱きすくめられた…
「レンジ…さん…」
私の胸の前に交差されてるレンジさんの腕をギュッと握り締めた…
もうぎゅうぎゅうと抱きしめられて…レンジさんの身体が押し付けられて…
心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてる…
掴まってる手の平から密着してる背中から…レンジさんの身体の温もりと身体の感触が伝わって…
もう倒れちゃいそう!!!
「智鶴……」
「あ…ん…」
耳から首筋を触れるだけのキスが下りていく…
「智鶴……今何思ってるか俺に全部言ってみろ…」
「や…嫌です……」
「何でだ?」
「あっ……」
今度は頬をキスしながら上がってくる…
「智鶴…」
「だって…」
「だって?」
「きっと…レンジさん呆れるし…こんな事言う私の事嫌いになる…」
「だから嫌いになんてならねぇって。呆れる事はあるかもしれねぇけどな。」
「あ…呆れはするんですか?」
「智鶴は変な風に誤解すんだろ?そこだけだ。」
「………今回は…誤解じゃ無いです……」
「は?」
「レンジさんが他の人に告白されちゃうとかって…わかります…
だってレンジさん優しいし男らしいし…ハンサムさんだし…
惹かれる女の人がいてもおかしくないってわかってます…」
何だか…褒められてるんだろうが…素直に喜べねぇ…
「今日はたまたまかもしれませんけど…私が今日の事知ったの何でだと思います?」
智鶴が俯きながら俺の方を見もせずに話し続ける…
「テレビで見たんじゃねーのか?」
「街中の…ビルの電光掲示板です……」
「?」
「びっくりした……」
「俺が仲村と付き合うのかと思ったからか?」
「ううん…それもビックリしましたけど………」
「なんだ?」
「………自分のお付き合いしてる人の名前がそんな所に流れるなんて…ビックリです…」
「智鶴…」
「仲村さんの告白だってテレビ放送でそれを見てた人全員に伝わってて…
ネットでも話題になって……自分のお付き合いしてる人の事をテレビやネットで知るなんて…
初めての事で……私……うっ……」
「…………」
「レンジさんって……役者さんで……ひっく……芸能人で……周りにいる人も…芸能人で…」
「何が言いたい?智鶴……」
「私…とは……違う…世界の人なんだな……って……」
「 !! 」
智鶴のそんな言葉を聞いてヤバイと思った。
誤解なら解けば良い…俺が本当に惚れてるのは誰かわからせればいい…
だから何も心配はしねぇが…
役者そのものを気にされるともうどうしようもねぇ…
俺はこの仕事を辞める気なんてねえし…こればっかりは理解してもらうしかねぇ……
今まで付き合ってた奴はどっちかつうと役者である俺が目的だった所があった。
だから1度も芸能人だとか俳優だとか気にされる事なんて無かった…
だが…智鶴は違う…もし…どうしても無理だといわれたら…
その時は……
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