Love You !



48




いきなり現れた自称智鶴の兄貴…


「もういきなり現れて何言い出すの!
私だってもう大人なんだからお兄ちゃんの言う事なんて聞きませんから!」

「なっ!!!!ち…智鶴!!??」

「!!」

また智鶴の肩をガバッと鷲掴む。

「お前は……一体いつからお兄ちゃんにそんな口を利く様になったんだ!!
お兄ちゃんはそんな風に智鶴を育てた憶えはないよっ!」

「別にあんたに育ててもらったわけじゃねーだろ。」

呆れて思わず横から口を出した。

「ウルサイよ!君は!!
智鶴!あんな奴と付き合うからこんな風に聞き分けの無い子になったんだね!」

「あぁ?」

言いたい放題のお兄ちゃんの言葉にレンジさんの眉がピクリと上がった。

「も…もうお兄ちゃんは変な事言わないでよ!!」
「変な事って何だ!その通りだろ?こんな男智鶴には似合わない!
大体なんで俳優なんだ?芸能人なんだ?絶対もてあそばれて捨てられるのがオチだよ!
智鶴!!目を覚ませ!」

「オイ…」

いい加減にしろよ…いくら兄貴でも容赦しねぇぞ…

「お兄ちゃん!」

もうレンジさんが今にも怒り出しそうで…私はハラハラのドキドキで…

「と…とにかく部屋でゆっくり話しましょう!」



「…………」

何だかとっても気まずい空気が漂ってる…

コーヒーを出したけどお兄ちゃんもレンジさんも口を付けない…

私のお兄ちゃん…

私より5つ上の…そう…優しいお兄ちゃん…だったんだけど…
私が中学に上がった頃からとっても心配性になっちゃって…

でも自分の仕事の都合で家を出なきゃいけなくなって…
それからはちょっと距離を置いていられたのに…

今回の仲村さんの事や記者会見の事も仕事で海外に行ってたからちょうど良いと思ってたのに…

だからお父さんとお母さんにお兄ちゃんには言わないでねって
口止めしておいたのに…こんなに早くバレちゃって……

うう…レンジさんにも話す機会なかなか無くて…
って言うかどう話せば良いのか分からないうちに本物に会っちゃったから…

どうしよう…もうレンジさんにとってお兄ちゃんなんて印象最悪だろうな…

「酔った智鶴に手を出したのか!」
「あぁ?」
「記者会見で言ってただろう?お互い1人で飲んでて偶然隣同士だったって…」
「だったら?」
「やっぱり酔った智鶴が何もわからないのを良い事に君は…」
「………」

あながちウソとは言えねぇが…なんか言い方に腹が立つ!

「貴様ーーー!!」

「!!」

いきなり野郎が俺につかみ掛かって来た!

「きゃあ!お兄ちゃん!?」

キッチンに行ってた智鶴が気付いて飛んで戻って来る。

「イテテテテ!」

「ったくいちいちウゼェな…」

俺に伸ばされた手をまた手首を掴んで捻り上げて今度は相手を床に押さえ込んだ。

「お兄ちゃん!」
「ほら見ろ!智鶴!またこうやって暴力振るうんだぞ!!」
「お兄ちゃん…」
「………」

智鶴の手前仕方なく手を離す。

「もういちいち突っ掛からないで!本当何しに来たの?」
「何しにって智鶴を連れ戻しに来たに決まってるだろ!」
「!!」
「ええっっ!?」

また俺に捻り上げられた方の腕を擦りながらの文句だ。

「だから僕は智鶴の1人暮しは反対だったんだ。」
「今更何言うのよ!私はちゃんと1人でやってます。」
「その結果がこれじゃないか!」

お兄ちゃんがレンジさんを指差して怒鳴る。

「!!」

あ!レンジさんの眉がまたピクリと動いた…もう!お兄ちゃんったら!!!

「僕はコイツとの交際も結婚も認めないからな!」
「どうしてよ!お兄ちゃんにレンジさんの何がわかるのよ!」
「色々噂聞いてる!直ぐに手を出して暴力に訴えるし…」
「手なんか出さないわよ!」

この前だってちゃんと堪えてくれたもの。

「女優とも噂があったばかりだろ!」
「あれは相手が一方的に言っただけでちゃんと相手のお父さんが謝ってくれたもの!」
「火の無いところに煙は立たないって事だろ。」
「お兄ちゃん!」
「とにかくしばらくここで世話になるからね。智鶴!」
「え!?」
「仕事も1週間休暇をもらってきたし。」
「!!」

野郎は満足げにニッコリと俺に向かって笑ってやがる…

今までの腹の立つ暴言は我慢してやろうと思った。
確かに未だに智鶴の家には何も挨拶に行ってなかったから
文句を言われても仕方ねぇと思ったからだ。

だが…今の言葉は聞き流せねぇ…今日一晩ならまだ我慢出来る。
1週間?1週間だと?

その間ここに居座るつもりなら智鶴はその間俺の所に来れねぇって事じゃねーか?

「兄妹なんだから別に構わないだろ?コイツが泊まるより当たり前の事じゃないか。」

「…………」

ホント…マジムカつく野郎だな…
智鶴の兄貴じゃなきゃあの煩い口を喋れねぇ様に黙らせてやるのに…

「…………」
「レンジさん…あの…」
「俺は今日これで帰る。」

そう言って立ち上がって玄関に向かう。

「ああ!帰れ帰れ!」

そんな言葉が俺の背中に投げ掛けられる。

「お兄ちゃん!あの…レンジさん…」

そんな俺の後ろから智鶴が心配そうな顔でついて来た。

「あの…本当にごめんなさい…お兄ちゃんきっと色々誤解してて…」
「今は俺はいない方がいいかもしれねぇな…何だか俺に対してムキになってるみてぇだし。」

話し掛けても今は火に油を注ぐようなもんだろう…

「ちゃんとお兄ちゃんには話しますから…」
「ああ…でもあんまり無理強いするな…もっと捻くれるぞ。」
「はい…ちょっと時間置いて話してみます……あの……」
「ん?」
「なかなか…レンジさんの所に行けなくて…ごめんなさい……」

本当なら今日はレンジさんの家に泊まるはずだったのに…
もう1週間くらいレンジさんと触れ合ってない……

レンジさんが…恋しかったのに……

「……仕方ねぇだろ…明日またゆっくり話す。少しは兄貴も落ち着くだろ…」
「はい…あの…両親は本当に喜んでくれてますから…だから…」

私の家族を…呆れたりしないで欲しいな……

「あ…」

「智鶴……ちゅっ…」

「ん……」

玄関で…ぎゅっと抱きしめられて…優しいキスをレンジさんがしてくれる…

「レンジさん……」

そのままレンジさんの胸に顔をうずめた……
レンジさんの身体に腕を廻して…私もぎゅっと抱きしめて安心をもらう…

やっぱりレンジさんのこの身体の感じ……ホッとする……
いつもあったかくて…逞しくって……頼りがいがあって……もう私はウットリ…

「ち…智鶴っ!!!」

「お兄ちゃん!!」

ウットリしてた私の気持ちが一瞬で掻き消えた。

「玄関で一体何してるんだっ!」
「お付き合いしてるんだもの!いいでしょ!」
「智鶴〜〜〜〜!!!
ああーーー僕の可愛かった妹が……こんなハレンチな事を僕の目の前で…」
「もう!一体私の事どう見てるの!23歳なのよ!立派な大人の女性でしょ!」
「いいや!智鶴はまだまだ子供だよ!」
「もういい加減にして!」

あながち智鶴がまだ子供と言う所は否定できない気もするが…
これじゃどうにもこうにも話が進まねぇか……はぁ…仕方ねぇ…

「敦さん。」

「!!」
「レンジさん?」

レンジさんが真っ直ぐお兄ちゃんを見て…お兄ちゃんを名前で呼んだ…
しかもいつもと違う標準語…

「今日はこれで失礼します。明日また伺います。」

そう言って頭を下げた…

「……あ…ああ…」

レンジさんの突然のそんな態度にお兄ちゃんはちょっと慌ててた。
レンジさんの方がずっと大人だよ!お兄ちゃんの方が年上のクセに!

「レンジさん!」

私は…そんなレンジさんの態度が嬉しくて…嬉しくて…
レンジさんの首に腕を廻して飛びついた。

「智鶴!!」

お兄ちゃんがまた私の名前を呼んだけど今は気にしない…
レンジさんは抱きついた私をちょっと両腕に力を入れて抱き上げてくれる…

「後で明日来れる時間連絡する。」

耳元で優しいレンジさんの声が響いた…もうそれだけで身体が痺れちゃう…

「はい……待ってます……」


ぎゅう〜〜〜っとレンジさんの首に廻した腕に力を込めて…

今度は私がレンジさんを抱きしめた。





Back    Next






  拍手お返事はblogにて…