Love You !



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こんな職業だし自分の娘との事がテレビや週刊誌に書かれたりと
もっと敬遠されるかと思ったが思いの外あっさりと智鶴との事は認めてもらえた。

なるべく早く式も挙げたい事とその前に智鶴と一緒に暮らしたい事も話した。

もともと1人暮らしをしてた智鶴だからその辺はうるさく言われる事は無く
逆に1人暮らしをさせていた方が心配だったとホッとされたくらいだった。

確かに智鶴の1人暮らしは心配でしょうがない…
その辺はあの兄貴と同意見なのが癪に障るが…まあ…仕方ないかと諦める。




「で?あちらさんはなんと言ってるんだ?
やっぱり 『元ヤンキーのお前には娘はやれん!』 とか言われたか?」

「あぁ?」

親父が真面目な顔でそんな事を言いやがった!

「俳優なんて仕事で浮気の心配されなかった?」

今度は母親が真面目な顔でそんな事を言う始末!!ふざけてんのか?

「なんだそれは?俺は浮気なんてしねぇ!」
「でもあんな若い女の子に告白されてたじゃない?智鶴さんという人がいながら…
結婚前からあんなんじゃこれから先気が気じゃ無いわよ。女としては!ね?智鶴さん!!」
「…え!?あ…いえ…私は…」

急にお母様に話を振られて焦ってしまった!
ごめんなさいレンジさん!!ちゃんと答えられませんでした〜〜

「変な事言ってんじゃねーよ!あれは向こうが勝手に言ってた事で俺は何とも思ってなかった。
あの後ちゃんとあいつの親父が謝罪してただろうが!
智鶴もそんな焦んな!俺は浮気なんて絶対しねぇ!」

「…はい。」

俺のそんな言葉に智鶴は赤くなって俯いた。

「まっ!やだ!やっぱりそうやって脅してるのね?漣迩ってば…」
「あのなぁ〜〜」
「でもちゃんとあちらのご両親には認めて貰ったんだろ?」
「ああ…大丈夫だ。」

ただ…最後にあんなにサイン書かされるとは思ってもいなかったがな…

自分の方ではもう俺が俳優業やってるのなんて当たり前の事だったから
あんな風に思われてるなんて…久々の感覚だった…

智鶴の両親とも打ち解けて…これからの事を話し合った後…

「でも結婚式はきっとウチの親戚関係は大変じゃないかしらね?」
「そうだな…」
「?」
「え?なんで?」

俺も智鶴も何でだかわからず…思わずお互いの視線を合わせた。

「何か問題でも?」

何かあるなら早目に言ってもらって解決した方が…

「だって…なんたってお相手は 『鏡 レンジ』 さんなのよっ!芸能人でしょ? 」
「そうだけど…」
「今までウチの身内でそんな人誰もいないんだから!
それに参列される方の中にもそちら関係の方だっていらっしゃいますよね?」

何だか期待一杯の眼差しを送られてる…?

「は…はあ…多少は…」
「たとえば?」
「ちょっ…お母さん!!」
「一応…親友の 『楠 惇哉』 と先輩の 『七瀬 優二さん』 と後輩の 『能登 遼平』 と…」

俺はふと思いついたメンバーだけ名前を連ねた…
呼ぼうと思ってるのは確かだし…

「まあーーもう名前を聞いただけでもクラクラしちゃうわ ♪ 」
「お母さん!レンジさんに失礼でしょ!」
「でももう親戚中から注目の的なのよ。」
「なんで親戚中に知れ渡ってるのよ!テレビだけならわからないでしょ?」
「だって…つい嬉しくて…たまたま電話が掛かって来た湯本のおばさんに話しちゃったのよ。」
「湯本の…おばさんに?」

親戚一のお喋りおばさんじゃない…きっともう殆んどの親戚が知ってるんじゃないのかしら…
そんな事を考えるとちょっと気が重い…

「智鶴…俺は気にしてないから心配するな。」
「…………レンジさん…」

レンジさんはニッコリと笑ってくれた。
本当にごめんなさい…レンジさん…

「でね…」
「はい?」

お母さんがオズオズと言い難そうにしてる。

「お母さんなに?また変な事…」
「ううん…変な事って言うか…その…頼まれ事をしちゃって…」
「頼まれ事?」
「何ですか?自分に出来ることなら…」
「実は…サインをね…頼まれちゃって…」
「お母さん!もうお父さんもお母さんに言って!レンジさんにこれ以上迷惑掛けないで!」
「う…ん…実は父さんもご近所から頼まれてしまって…」
「ええ?」
「構いませんよ。」
「レンジさん…」

サインくらいなら別に…

「じゃあ…ご好意に甘えちゃって良いかしら?」

「!!」
「ええ!?」

ドサリ!とテーブルの上に置かれた色紙は…ザッと見ても4・50枚はありそうな枚数だった。
マジかっ!!??

「お母さん!!!多すぎでしょ?」
「だって…色んな人から頼まれちゃって…お父さん絡みだってあるし…」

「………か…構いませんよ…大丈夫です。」

なるべく引き攣らずに微笑んだ…はず…


その後…俺はひたすら色紙にサインしまくって…写真も一緒に撮りまくった……

これも智鶴の親に気入られる為と文句も言わずひたすら耐えた。

その後…智鶴に 『ミーハーな親と親戚でごめんなさい!!』 とずっと謝られた。

まあ…俺はそんなに気にはしてなかったがあんまりにも智鶴が恐縮するもんだから
それをチャラにしてやろうとその日は明け方まで俺の相手をしてもらった。
当然の事ながら智鶴は文句1つ言わなかった。




「疲れたか?」
「いいえ…大丈夫です。」
「オデコは?ああ…まだちょっと腫れてて赤いな…」
「痛みますけど…大丈夫です。」

レンジさんの実家から帰って来て2人共お風呂に入って
リビングでレンジさんはお酒を飲んで私はコーヒーを飲んでいた。

2人でソファに向き合って座ってレンジさんが昼間私がぶつけた額を確かめてる最中…
私は心臓がドキドキ…だって目の前にレンジさんの顔だし…それに私の事心配してくれてるし…でも…

無事に今日が終わって良かった…

「智鶴…」
「はい?」

見上げるとレンジさんが私をとっても優しい眼差しで見つめてた…
それがわかるだけで私はとってもホンワカとした気持ちになってとっても安心する…

「智鶴はいいのか?」
「はい?」
「どんどん話を進めてるが…智鶴の気持ちは…俺と一緒なのか?」
「レンジさん…」
「無理してるなら…結婚はもっと先に延ばしてもいいんだぞ…
俺は一緒に暮らせただけでも十分だ…」
「レンジさん…」
「ん?」

「それって…本心なんですか?」

「………」

「本当に?」

今度は反対に智鶴にジッと見つめられた。
その控えめで真っ直ぐな眼差しは反則だろうが…智鶴!!

「…………」
「レンジさん?」

俺は無言で智鶴を見つめ返してたが思わず顔を逸らしちまった…
この…俺が!

「………だよ…」
「はい?」

ボソリと呟くからなんて言ったのかわからなくて…

「だから……」
「だから?」
「我慢してるに決まってんだろっ!本当は明日にでも籍入れたいくらいだっ!!」
「!!!」

急にハッキリと言われてビックリで…

「…………」
「レンジさん…」
「なんだ…」

レンジさんは横を向いちゃって私から顔を逸らしてる…

「顔…真っ赤です。」
「!!!!」

そう言った瞬間もの凄い勢いで振り向かれた。

「智鶴…」
「は…はい…?」
「俺をからかうとはいい根性だな?」
「え?いえ…そんな…からかってなんて…レ…レンジさん?」

レンジさんがまた…いつもと違ういつもの笑顔でどんどん迫って来る…
私はソファの背凭れに追い詰められて…引き攣り笑い…

「ど…どうしちゃたんですか?レンジさん??」
「別に…ただ…」
「ただ?」
「どうやってからかわれたお返しをしようか考え中だ。」
「え?え?あの…」
「覚悟はいいか?智鶴…」
「ええ??あっ!やんっ!…ひゃあああああ!!ダっ…ダメですっ!!レンジさん!!アンッ!!!」


その後…どんなに智鶴が謝っても俺は智鶴を攻めることを止めなかった…

別に怒ったわけじゃねぇけど…
やっぱ俺に抱かれて色っぽく乱れる智鶴を見てるといつまでも離したくなくて…

ただ…頭の片隅に後数日でドラマの最終回が放送されるな…なんて思い浮かんで…

智鶴は…どう思うのか…

多少気になるのは否めないが…今は無理矢理思考の奥の方に追い込んだ。





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