オレの愛を君にあげる…



18




「え?」

何で急にそんなこと聞くのかな?
しかも、なんの脈絡もなく?イキナリその質問ですか?

夕ご飯の支度中に、突然耀くんがオレに聞いた。

「ねぇ?どのくらい?」

首を傾げて……うーーそんな可愛い顔で聞かないでよ。

こ……これは正直に答えるべき?
いやっ!そんなことしたら、絶対耀くん引くよな?かと言って、少なく言って信じるか?
その前に、耀くんにとって少ないって何人くらい?

「椎凪って、今までどのくらいの女の人相手にしたの?」

なんで急にそんなこと……?オレは慌てに慌てまくった!!

マジで答えると100や200じゃきかないし、でもそんなこと絶対言えねーっっ!!
2・30じゃ少ないか?オレが遊んでたの耀くんなんとなくわかってるしな。

そう!あのお節介な、友人2人のお蔭で!!
オレを受け入れてくれたと思ったのに、なかなかどうして……あのあとからも、結構容赦なかった!

慎二くんはにっこりと笑いながら、祐輔はギロリとオレを睨みながら、

『お前(椎凪さん)が耀(君)のことを好きだって気持ちがわかっただけで(わかりましたけど)、
それとこれとは話は別(です)だ。』

ってはっきりと言われた!!
未だにオレにとってこの2人は、オレと耀くんの関係に脅威をもたらす相手だ。

まさかあの2人が耀くんにこんなこと言わせたのか?!

ああ……でもどうする?今はそれどころじゃない。

人数だよ、人数!!
30でも多いって思われそうだし、でも1人とか2人なんてウソがバレバレだし……。
ここはトボケるか?いやっ!それも何かヤバイ気が……。

などと、あれこれブツブツとやってたら耀くんが……。

「答えられないほど、たくさんなんだね。わかったよ」

「え゛っ?!」

オレの周りの空気がピキッ!っと音を立てた気がした。

「ごめんね、変なこと聞いて……」

そう言うと耀くんは、オレに背を向けてリビングに行っちゃった……。
え?うそっ?何かえらく誤解して納得しちゃった?

ちょっ……ちょっと待ってよ!!しかも、何気に呆れられた?

ええーっ!うそぉっっ!!!


オレはその日、耀くんの誤解を解くこともできず、気まずい雰囲気のまま次の日を迎えた。

だっていくら考えても、相手にした人数を何人って言えばいいのかわかんなかったから!!




次の日、刑事課に入ってきたルイさんの開口一番のセリフが……。

「おはようーー!!椎凪!耀君に嫌われたぁ?」

「!!」

なにっ!?テメェの仕業かっ!!

オレはブン!と音がしそうなくらいの勢いでルイさんが入ってきた入口に振り向いた。

一瞬で理解したぞっ!!この疫病神女っ!!
いつもいつもオレの邪魔しやがってっっ!!くそーっっ!!

怒りが爆発した!!

「ちょっとルイさんっ!耀くんに何言ったんだよっ!余計なこと言わなくていいからっ!」
「えー?あたしは本当のこと言っただけよ。
“昔、もの凄い人数の女の人相手にしてたみたいだから、どのくらいか聞いてみて” って。
その慌てぶりだと、聞かれたんだ〜〜ウフフ ♪」

なんだとォ……ふざけんなっ!!
それにその、してやったりの笑いも癪に障るっ!!

「それが余計なお世話なんだよっ!なんでいつもオレの邪魔すんだよ!!」

ホント、いつもいつもそうだ。

「あんたに耀君渡さないために決まってんでしょっ!!」
「大体いつの間に、耀くんのメルアド聞いてんの?まったくもーーーーっ!!」
「あのね、あたしだって刑事なのよ!メルアドくらい直ぐ調べられるわよっ!」

だからって、耀くんのメルアド知ってる奴なんてそうそういないっつーの!!

「あー!オレに黙って耀くんに会いに行ったんだろっ!?」

そう言えば、通ってる大学のこと聞いてたもんな?
くそっ!酔ってて憶えてないと思ってたのに!!

「はぁ?何であんたに断らなくちゃいけないのよ!ばっかじゃないのっ!」

もの凄い呆れた顔で突っ込まれた。

「あーー!!もースッゲームカつく!!」
「ふんっ!!」

などと、椎凪が多少分の悪い小競り合いをしていた頃……。


「昨日聞いても、椎凪答えてくれなかったんだ」

大学の教室で、耀が祐輔に昨夜のことを話していた。

「そりゃ、耀には言えねぇだろうな」

祐輔が意味ありげに笑ってる。

「えー祐輔だって、和海さんと付き合う前はいろんな人と付き合ってたじゃない。
別にその位ならさ……」

付き合ってたというのとは多少違うが、女の人と係わってたのは本当のことだし、
特定の相手を決めずにその時だけのつき合いもあるということは理解できる。
それを嫌悪するような気持ちもない。
祐輔がその女の人に不誠実だったとは思えないから。
自分なりに、女の人とそういうおつき合いもあるんだな〜くらいには理解している。
それにそんな祐輔だけど、人数はそんなに多くはないんじゃないかと思えるし。

だから椎凪も、正直に言ってくれると思ったんだけどな。

「アイツのことだから、1000人位いるんじゃねーの?」
「え?!」

祐輔の言葉に、1000人の女の人を想像してしまった。
頭の中に入りきらないんだけど?……そんな人数と椎凪が!?

「ええーーーーっ!!そんなに!?」

オレは目を真ん丸くして驚きを隠せない。
ま……まあ椎凪だって大人の男の人だし……見た目だってああなんだから
女の人に好意だって持たれるだろうし……。

でも……だからってそんなに……ああ、だから昨夜オレに何も言えなかったのか……。

「ふ……ふーーん……」
「…………」

どうにか椎凪の女遍歴を理解しようとしてる耀が面白くて、祐輔は心の中でクスクスと笑ってた。
声に出して笑えば、自分がからかわれたとわかってしまうから。

──── 祐輔の言葉はすぐ信じる耀。


一番の強敵が、祐輔とはまだ気付いていない椎凪。

がんばれ!椎凪!








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