オレの愛を君にあげる…



23




「はあ……」

オレは小さく溜息をついた。
大学の教室……祐輔は今日は休みだ。
だから一人で講義を受けてるんだけど、やっぱり一人って緊張する。
もう学校に通うようになって何年も経つのに、オレって……なんでいつもこうなんだろ?
いつまで経っても進歩がないって思う。

「はあ〜〜」

そんなことを思ってたら、ガタッと音がして隣の席に誰かが座る気配がした。

「!!」

うわー誰?やだなー。
こんなに他に席が空いてるのに、何でオレの隣?

そうなんだ。
ガラガラってわけじゃないけど至るところに空席があるのに、なんでよりにもよってオレの隣?
ビクビクしながら、こっそりと隣を見ると……。

「はーい♪ ご機嫌よう、耀く〜ん♪」
「え゛っ!?」

思わず隣に座る人物をマジマジと見てしまう。
ウソ!?他人のそら似?

「し、椎凪ぁ!? 」

大声で叫んで、慌てて自分で自分の口を押さえた。
周りの人が不思議そうにオレを見たから。

「な、なにしてんの?こんなところでっ!!」

オレは小さな声で、でも言葉に力を込めて椎凪に話しかけた。

「えー?暇だったし、耀くんに会いたかったから♪」

アッサリとハッキリ言ったな。
確かに今日は休みって言ってたけどさ。

「もー出て行く時間ないじゃん。いい?大人しくしててよ!わかった?」
「うん、わかってるよ〜♪」

両手で頬杖をつきながら、ニッコリと笑う椎凪……怪しい。

はうっ!

腰の辺りを触られた感触がして、身体がビクン!と弾けた!

「ちょ……椎凪!?」

椎凪の片手がオレの腰に廻されて、もう片方の手は机の上に置かれてたオレの手を握ってる。
いつの間に?

「しっ!静かに!耀くん」

オレの耳元に椎凪が口を近付けて囁く。
しかも、机の上に置かれてたオレの手の甲を指先で軽く撫でてるし。

「なにしてんの……放して!!皆に気付かれるから。やめ……」
「うん。だから耀くんは前向いてて」
「はあ?」

そう言いながら、オレの首筋に口を近付ける。
くっついてはいないけど、椎凪の息と唇のあたかかさがオレの首に感じてフルリと身体が震えた。
密着してる椎凪に気づかれただろうか?

「もー椎凪がやめてよ!!」
「やだよ」

言葉どおりやめる気配はなくて、オレの腰と手を撫で続けてる。

「椎凪ぁ〜〜」
「今なら抵抗できないでしょ?くすっ」

オレにベッタリとくっついて、腰に廻した手はさっきからオレの身体を触りまくってるし、
頭は椎凪が自分の頭でスリスリしてくるし。

「これじゃ講義も聞けないじゃないかっ!!」

さすがにキレた。
椎凪になら、文句を言えるオレ。

「なんで?聞けるでしょ?」

ニッコリ笑って椎凪が平然と言う。

「そんなに感じる?」

腰に廻してた手を腿に伸ばして、当たり前のように手の平で撫でながらオレに聞く。

「なっ!バカっ!ちがう」
「フフ♪ そう。じゃあ触ってても、どってことないよね?耀くん」
「…………」

うう〜〜椎凪ってば〜〜。

オレは講義の間中、椎凪に攻められ続け必死にそれに耐えていた。
だって、ここでモメたら周りにバレちゃうから。

それにしても、椎凪の動きはイヤらしいと思う。
手の平の力加減といい、指先の動きといい、首に触れるか触れないかの唇の距離といい……
変な声が出ないようにするのが大変だった。

やっぱり椎凪ってば、色々経験が豊富なんだって思った。



やっとの思いで講義を受けて終わった直後に、椎凪を連れて外に出た。

緑が多くて、木のベンチやテーブルが置かれてる休憩できるところ。
あんまり人がこないから静かに休むにはちょうどよくて、祐輔とはよくここでお昼を過ごしてる。

外のベンチにたどり着くと、オレはテーブルにぐったりとうつ伏せてた。
精神的にも肉体的にも疲れちゃったから。

「もー椎凪はぁ……」

うつ伏せのまま、くぐもった声で文句を言う。
それは正当な不満だとオレは思う。

「ダメだなぁ〜耀くんは。修行が足りない!」
「はぁ?」

オレの疲れの原因の椎凪が、笑いながらとんでもないことを言う。

「…………」

修行って……なんの修行だよ。
オレは呆れてなにも言い返せない。
そりゃ椎凪はこういうスキンシップ、慣れてるのかもしれないけどさ!
オレは慣れてないんだってば!

正面に座る椎凪を恨めしそうに睨んでるのに、椎凪は相変わらずニコニコしてる。
そして持っていたバックから、イソイソと何かを取り出した。

「はい、お弁当作ってきたよ♪」
「なっ!?」

オレは言葉を失った。
お弁当と言って出されたソレは……3段のお重にタップリと料理の入ったお弁当だったから。

「うわーーー椎凪ありがとーー!!わーーうれしいーー♪ 美味しそうーーー」

オレの今までの疲れと怒りは何処へやら。
今にもお弁当に飛びつく勢いで、ワクワクと目の前に並べられるお重の箱を、キラキラした眼差しで見てた。
今は、オレはご主人様にお預けを言われて待て状態の犬みたいかもしれない。
椎凪の言葉を待ってる。

「どうぞ。たくさん食べてね、耀くん♪」

思い切り頷いて、箸を手に取る。

「いただきま〜〜す♪」

遠慮なくパクパクと椎凪の作ってくれた料理を食べていく。
ああ〜〜いつ食べても椎凪の料理は美味しい〜〜♪ ああ、オレってこんな美味しい料理食べれて幸せ♪

声には出さずに、そう思っていたオレを見て、椎凪がニッコリと笑うと 「オレも幸せ♪」 って言った。








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